暮らしやすさを叶えるために
田の字型の間取りを大幅に変更
Iさんの祖父が建てた築67年の木造2階建ては、一尺のケヤキ大黒柱を中心に和室が続く典型的な田の字型の家。これまで何回か内装などのリフォームを重ねましたが、石場建て(礎石の上に柱を乗せただけの昔ながらの基礎)で床下に湿気がこもり、構造材がシロアリにむしばまれていました。そこでIさんは、隣家の新築工事をしていた佐善工務店に相談。調査をすると被害が深刻であることが分かり、建て替えを決意しました。
当初はコンパクトな平屋をイメージしていたIさんでしたが、息子さんが「こんなに立派な柱があるのにもったいない」とリノベーションを希望。最終的に「老いては子に従え」と思い直し、家づくりを方向転換しました。
自社でも設計を手がける佐善工務店ですが、今回は建物の築年数やリノベーションの内容から、古民家リノベに定評のある建築家の洞口苗子さんにプランニングを依頼。既存の住宅の間取りや状態、ご家族のライフスタイルを考慮して洞口さんが提案したプランをベースに、新居への希望を反映させていきました。
その結果、阿武隈川の浸水被害対策として2階をそのまま残し、1階を減築しつつ間取りを一新することに決定。既存の和室二間と縁側をつなげたゆとりの広さのリビング・ダイニング、陽当たりの良い南側の寝室、コンパクトでスムーズな家事動線など、暮らしやすさを追求したプランが出来上がりました。
自社職人の確かな技術力で
古材を活かして住宅性能を向上
生まれ変わった住まいの外観は、ガルバリウム鋼板でモダンな雰囲気に。屋内は、極太の柱や梁、板張り天井が築67年の趣を感じさせます。
施工にあたり佐善工務店が徹底したのは、古材を活かしながら住宅性能を高めること。「隙間だらけで冬は寒い」という悩みを解消するために断熱改修を施すとともに、構造用合板による壁の補強で耐震性も向上させました。
床下に砂利とコンクリートを敷き詰め、ベタ基礎に変えたことで、シロアリ対策も万全。シロアリ被害に遭っていたケヤキの柱は、新しい木を根元に継いで再利用しました。使える建具や欄間はそのまま活かし、新設した玄関の化粧梁や造作建具などは飴色に塗装して、古材の風合いになじませています。
自然素材を積極的に使い、高性能で快適な注文住宅を手がける同社ですが、隠れて見えない部分まで気を配り、現場での変更にも柔軟に対応できるのは、熟練した自社職人の技術力があってこそ。Iさん宅でも、当初の設計図にはなかった建具やキャットウォークの造作などを、現場で相談しながら進めたといいます。
「うまく想像できなかったけど、出来上がると素晴らしいね。きっと暮らしやすくなるだろうし、せっかく残した家なので大事に使います」と、Iさんはこれから始まる新しい生活を楽しみにしています。
(Reported by Replan)